レセプト業務を外注(代行依頼)するために必要な費用について解説
開業医としてクリニックを運営していく立場になり、医師としてよい医療を提供することはもちろん重要ですが、経営者として自院の経営を見ることも非常に大切です。
クリニックの人事でよく問題にあがるのが、看護師や医療事務の急な離職やスキルや経験をもった方の採用の難しさです。
とりわけ医療事務に目を移してみると、他職種に比べて比較的安価な人件費で雇われているケースが散見されますが、医療事務は診療報酬請求や外来会計、受付、電話対応業務などクリニック運営において多岐にわたる業務を行っています。
その中でも診療報酬請求業務や日々のカルテチェック、外来会計等は専門性が高く、誰にでもできる業務ではありません。またクリニックにおける保険診療の売上を適切に上げるために必須な業務であり、経営へのインパクトも大きいものだと考えています。
そこで弊社では、急な離職にも耐えられる体制づくりや医療事務未経験の方への教育をスムーズに行えるようにするため、その専門性の高い医療事務のスキル・ノウハウをクリニックに蓄積・活用することを目的とした遠隔レセプト業務代行サービス(メディサポ)を立ち上げました。
こちらでは、レセプト業務を外注するメリットや必要性についてご説明します。
株式会社パドルシップ 代表取締役
京都大学卒、京都大学大学院修了
総合電機の技術職、日系コンサルティング会社で新事業企画、ベンチャー支援等の経験を経て、2023年に株式会社パドルシップを設立。
江戸川区のクリニック立上や戦略立案、集患を経験し、現在も経営に参画。
レセプト業務とは
医療事務の仕事を大きく分けると【受付業務】【会計業務】【レセプト業務】です。
受付業務は、患者さんから診察券や保険証を預かったり、保険証の確認、新患登録、電話対応などを行います。会計業務は、診察後にカルテ入力または記載された診療内容に沿って診療報酬点数を計算し、患者さんに診療費の請求をします。
ここでお話したいのが、医療事務の仕事の中でも専門性の高いレセプト業務についてです。
レセプト業務とは文字通り、レセプト(診療報酬明細書)を作成し、点検から提出までを行う業務のことです。
その中でも最も重要な業務であるレセプト点検業務は、レセプトの病名と診療行為、処方内容などに整合性があるかを確認し、不備がないかをチェックします。
不備があった場合は医師に確認し、必要があれば修正を行います。
もし不備に気づくことができず、審査支払機関に請求してしまった場合は、査定されてしまい診療報酬点数が減点となり、医療機関の収入に影響が出てしまいます。
医療機関の報酬を大きく左右する重要な業務となるため、知識や経験値がないと未経験者にはとても難しい業務になります。そのため、レセプト業務ができる医療事務の人員確保に頭を抱える医療機関も少なくありません。
レセプト業務の外注は必要?メリットは?
レセプト業務を外注する必要性とメリットについてご説明します。
特に、特定の医療事務に業務が偏っているクリニック、医師がレセプト業務を行っているクリニック、医療事務の急な離職があったクリニックは外注の検討余地があると筆者は考えております。
それらのクリニックには以下のような課題があるのではないでしょうか。
- スキルを持つ医療事務の属人化の是正・業務負荷低減
- 教育体系づくりに工数が割けない
- 医師ならではの業務へ工数シフトしたい
この課題の本質は業務の属人化にあると筆者は考えています。
クリニック規模の拡大とともに潤沢な採用ができれば上記課題も徐々に解決できると思いますが、その過渡期において、レセプト業務の外注は時間づくり、スキル・ノウハウの体系づくりのためにも検討の余地はあるのではないでしょうか。
レセプト業務を外注するメリットをまとめると以下です。
- 特定の医療事務の業務負荷を低減できる(結果、離職率にも寄与できる可能性がある)
- 返戻・査定率が低減できる
- 残業代が低減できる
- 医師が行っている場合、診療等の医師にしか出来ないことへシフトできる
- 急な離職にも耐えられる組織体制づくりができる
- 外注先企業のノウハウやスキルを蓄積することで教育体系の土台をつくることができる
詳細はこちらの記事でもご紹介しております。是非ご参考ください。
レセプト業務代行の費用相場は?
本記事では一般診療所のレセプト業務について論じてきましたので、その業務代行の費用相場について説明いたします。
通常の外来レセプトの点検作業のみを行う場合は1件あたり100円~200円程度で実施されている場合が多いようです。
訪問診療や労災など、通常の外来保険診療とは異なったレセプト業務の委託については比較的高い水準で実施されており、1件あたり500円~2,000円程度の企業もあるようです。
当然ながら委託する業務の範囲によっても費用は異なります。レセプト点検のみを委託する場合や、作成や送信、返戻・査定対応などどの範囲までを委託するか、自院の課題と外注する目的や上記のようなメリットのどれに期待するのか、検討した上で決定するようにしましょう。
外注費用は妥当か?外注することによる本質的な効果は?
ではどの程度の費用だと妥当なのでしょうか。
例として1日あたり40件程度の保険診療を行っているクリニックの場合について概算してみます。
点検対象のレセプト件数を800件程度とします。
点検1件あたり2分として27時間程度の時間がかかります。医療事務の時給を1,500円として単純に4万円の人件費がかかります。
また委託することで点検により算定漏れの見つかる可能性(指摘率)を10%程度、増収の平均を2,000円として、1ヶ月あたり16万円(=800件/月×10%×2,000円/件)の効果があると想定できます。
つまり上記2点の金額的な面で、合計で月20万円程度の効果があると考えられます。
月の売上に対する割合が3.6%(=20万円/月 ÷ 560万円/月(※診療単価7,000円/件としたとき))となるため、インパクトは大きいと考えられます。
また上記には含んでいませんが、その他にも返戻や査定対応の人件費削減、医師の確認工数削減などの効果も追加して考えることもできます。
つまり、1件あたり150円で外注したとして、800件で12万円の費用がかかりますが、
算定漏れの指摘率が10%とすると、20万円の効果があると計算できるため、損はしないと言えるでしょう。
ただ、正直なところ、金額面だけの効果は上記のような規模感なので、微々たるものと捉える先生も多いかと思います。
ですので、むしろ金額面の効果ではなく、2章で説明したような定性面の効果の方が大きいと考えられます。
つまり、レセプト業務外注の本質的な効果は、
「離職防止」や「外注先企業のノウハウやスキルを吸収し自院のレベルアップを図ること」、「教育体系づくり」などマネジメント面への効果であると筆者は考えています。
まとめ
レセプト業務を外注する必要性やメリット、外注費用相場とその妥当性について説明しました。
外注の金額的な効果としては、主に以下が考えられます。
- 医療事務スタッフの人件費削減
- 算定漏れ分の増収
1ヶ月800件のレセプトがある場合、人件費削減4万円、算定漏れの増収16万円(指摘率10%、指摘単価2,000円と仮定)となり、レセプト1件150円程度であれば外注する妥当であると考えられます。
ですが、金額面の効果は正直なところ小規模であると言わざるを得ません。
レセプト業務外注の本質的な効果は、「離職防止」や「外注先企業のノウハウやスキルを吸収し自院のレベルアップを図ること」、「教育体系づくり」などマネジメント面への効果であると筆者は考えています。
査定は審査機関が見てくれますが、算定漏れは誰も見てくれません。
自院にどれくらいの算定漏れがあるのか不安な先生は、一度短期で試してみるのも良いと思います。自院のレセプト業務の水準を測ることができ、今後の成長に役立つと思います。是非ご参考ください。
最後に、弊社では15年以上、加算・算定漏れの確認や傷病名の確認、返戻/査定業務を実施してきた医療事務さんが在籍しています。
単純な加算・算定漏れを指摘するサービスとしてだけではなく、クリニックに知識やノウハウを蓄積することに重きを置いた遠隔レセプト代行サービス(メディサポ)を提供しております。
是非一度、お問い合わせください!宜しくお願い致します。