労災レセプトはここが違う!算定漏れ・請求ミスを防ぐ点検フローを解説

労災診療は、通常の保険診療とは異なるルールや様式が多く、レセプト請求で算定漏れや請求ミスが起こりやすい領域です。
算定漏れがあれば、本来回収できる診療報酬が未請求となり、クリニックにとって大きな損失となります。
また、請求間違いによる返戻や査定は、再提出対応でスタッフの負担を増やし、業務効率を大幅に低下させます。

本記事では、

  • 労災レセプトで算定漏れが起きやすい理由
  • よくある間違い事例
  • 点検の基本フロー
  • 防止のための実践的な点検方法
  • 再発を防ぐ仕組みづくり
    を徹底解説します。

1. なぜ労災レセプトは算定漏れや間違いが起きやすいのか?

労災請求は、一般保険診療に比べて下記の要因でミスが発生しやすくなります。

  • 労災診療と関係のない診療内容の扱い
    労災診療と通常診療が同日に行われた場合、区別して請求する必要があり、分離処理を誤ると返戻。
  • 必須情報が多い
    労災番号、事業場情報、負傷日など、必須項目の入力漏れは労災様式の差し戻し原因に直結。
  • 労災特有の加算条件の見落とし
    四肢加算など、労災独自で認められる費用の算定を忘れるケースが多い。

2. 労災レセプトでよくある算定漏れと間違い事例

算定漏れ例

  • 四肢に対する特例取扱いの加算
  • 労災独自の指導料、管理料の算定

間違い例

  • 業務災害(5号様式)だが、通勤災害(16号の3様式)の労災様式を預かってしまった
  • 労災診療とは関係のない診療を含めて請求してしまった
  • 労災番号・事業場情報の誤記

3. 労災レセプト点検の基本フロー(流れ)

算定漏れや返戻を防ぐには、標準化された点検フローを構築することが重要です。以下は、実務で使える基本の流れです。


ステップ1:初診時情報の確認・入力

  • 労災番号、負傷日、事業場情報、労務災害状況を必ず受付で確認。
  • 確認漏れ防止のため、「初診チェックシート」などを作成し活用してみる。

ステップ2:カルテと診療行為の突合

  • 診療録の内容と、レセプト請求予定内容を比較。
  • 創傷処置・検査・投薬・画像診断など、算定対象になりやすい項目を重点確認。

ステップ3:請求形式と必須情報の確認

  • 請求モードが「労災」になっているか。
  • 必須情報(労災番号・事業場名・所在地・負傷日・医師署名など)をすべて入力済みか。

ステップ4:労災特有の算定項目確認

  • 特定処置や検査加算の抜け確認
  • 労災対象外診療との分離が正しくできているか

ステップ5:添付書類の確認

  • 労災様式の有無
  • 医師記載・押印が済んでいるか
  • 書類送付の進捗を一覧で管理

出典:厚生労働省

主要様式ダウンロードコーナー (労災保険給付関係主要様式)


ステップ6:ダブルチェック

  • 請求前に必ず別スタッフが最終確認。
  • 「一人点検」ではなく「二重確認」でエラーリスクを最小化。

4. 労災独自で認められる費用と算定例

労災診療では、健康保険診療にはない特有の請求が認められています。
これを把握していないと、算定漏れによる未収損失が発生します。


① 四肢加算

  • 手(手関節以下)及び手指に係る一部の処置及び、手術の点数は健保点数の2倍として算定できる。
  • 四肢の傷病に対する処置・手術・リハビリテーションの点数は健保点数の1.5倍として算定できる。※1点未満の端数は切り上げ
  • 算定方法:四肢に係る一部の処置または手術の算定時に加算追加
  • 注意:四肢加算対象外の処置・手術・リハビリテーションがあるので要確認

② 義肢・装具・コルセットなどの補装具

  • 労災では、治療に必要な補装具の費用を別途請求可能。
  • 算定方法:製作指示書、領収書を添付して請求。
  • 注意:事前に労基署への申請・承認が必要な場合あり。

③ 特殊材料(ギプス・シーネ・創外固定具など)

  • 手術や処置で使用する特殊材料費は、労災請求で認められる。
  • 注意:健康保険と同様、使用量・部位・必要性を明確にカルテ記載。

④ 特定処置に伴う費用

  • 創傷処置、外固定など、業務災害由来の治療で発生する費用を確実に請求。
  • 算定漏れリスクが高い例
    • 四肢加算
    • コンピュータ断層撮影料の特例加算
    • 創傷処理以外での初診時ブラッシング料の算定

⑥ 労災様式・証明書の取扱料

  • 労災様式、休業補償用証明書などの文書料は、労災保険で請求可能
  • 算定例
    • 初回の診断書(様式第5号など)→ 療養の給付請求書取扱料 2,000円
    • 休業補償給付支給請求書(様式第8号など) → 休業に関する給付の請求取扱料 2,000円

5. 算定漏れ・間違いを防ぐための実践チェックリスト

労災レセプトは、請求漏れリスクが高いため、請求前に以下の項目を必ず確認しましょう。
このチェックリストを業務フローに組み込むことで、ミスの低減が可能です。


1. 労災番号・事業場情報の入力確認

  • 確認タイミング:受付時・初診時
  • 労災請求では、労災番号、事業場名、所在地、負傷日などが必須項目です。
    これらが未入力だと請求自体ができず、再提出の手間が発生します。
  • 対応策:初診時に必ず確認。

2. 請求モードが「労災」になっているか

  • 確認タイミング:レセプト作成前
  • 健保モードのまま請求してしまうと、請求先が間違いになり、返戻や未収につながります。
  • 対応策:レセコン設定を請求直前に再確認し、必ず「労災」モードで送信。

3. 診療行為と業務災害の因果関係をチェック

  • 確認タイミング:レセプト点検時
  • 労災では、業務災害に起因する診療のみ請求可能です。
  • 高血圧や糖尿病などの慢性疾患は含めないこと。
  • 対応策:カルテ記載を確認し、「業務災害に関係する診療か?」を必ず確認。

4. 算定漏れがないか確認(特に創傷・処置・加算)

  • 確認タイミング:請求前最終チェック
  • 外傷治療では、複数指の創傷処置や縫合、特殊材料などの算定漏れが発生しやすいです。
  • 例:指4本の裂創→1本分しか請求していないケースは大きな損失。
  • 対応策:部位別・件数別の算定が正しく反映されているかをチェック。

5. 添付書類の有無(様式第5号・第7号など)

  • 確認タイミング:請求前
  • 書類不備は、返戻・未請求の最大の原因です。
  • 対応策:請求案件ごとに添付漏れをチェックし、進捗を一覧化。

6. 仕組み化で「ヒューマンエラー」をゼロにする方法

ヒューマンエラーは、個々のスキル不足や注意力の問題だけでなく、属人的な業務フローや確認体制の欠如が根本原因です。
医療現場では、請求漏れ・添付書類の不足・請求モードの誤りといったミスが、クリニックの収益や信頼に直結します。
このため、「人が忘れない仕組み」をつくることが最優先の対策です。


1. 業務フローを標準化する

  • 問題点:ベテランスタッフの“暗黙知”で運用している場合、スタッフ交代時に知識の断絶が発生しやすい。
  • 対策
    • 「初診対応」「レセプト点検」「請求前チェック」の流れをマニュアル化
    • 書類添付や資格確認などのチェック項目を明文化
  • 効果:誰がやっても同じ品質で業務を進められる。

2. チェックリストを導入する

  • なぜ重要?:レセプト業務は多岐にわたり、漏れやすい工程が多い。
  • 実装方法
    • 「請求前チェックリスト」を紙またはGoogleスプレッドシートで共有
    • 項目例:「労災番号確認」「様式第5号・第7号添付」「診療行為と病名の整合性」など
  • 効果“人の記憶”に頼らず、チェックの抜け漏れを防ぐ

3. デジタルツールでアラートを設定

  • 問題点:口頭確認や目視のみでは、繁忙期にミスが発生しやすい。
  • 対策
    • 電子カルテ・レセコンの「未入力・未請求アラート」機能を活用
    • 「保険証未確認」「治癒日未入力」「請求モード健保のまま」などを自動で検出
  • 効果作業者の確認負担を軽減し、エラーをシステムが補正

4. ダブルチェック体制を構築

  • 問題点:一人で請求業務を担当していると、チェックが甘くなりやすい。
  • 対策
    • 「入力担当」と「確認担当」を分ける
    • 外注(レセプト代行サービス)との連携で、専門家による二重チェックを導入
  • 効果属人化を防ぎ、重大なミスを未然に防止

5. 「例外処理」を明確にする

  • 問題点:患者起因で発生するケース(保険証未持参、公費未着など)が標準フロー外になると、放置や遅延の原因に。
  • 対策
    • 「月遅れ対応マニュアル」を作成
    • 例:「未確認患者リストを毎週確認」「SMSでリマインド」「対応期限を1週間以内に設定」
  • 効果特殊ケースでも対応が遅れず、請求漏れゼロを実現

6. 教育と振り返りを仕組みに組み込む

  • 対策例
    • 月次で「返戻・査定の原因」を集計し、チームで共有
    • 返戻トップ3を重点改善し、マニュアルに反映
  • 効果同じミスの再発を防ぎ、業務レベルを全体で底上げ

7. まとめ|点検フローを仕組み化して算定漏れゼロへ

労災レセプトは入力項目や書類が多く、人の注意力だけではミスを防げません
しかし、点検フローの標準化+チェックリスト+外部サポートで、算定漏れや返戻は大幅に減らせます。

当社のレセプト代行サービス「メディサポ」では、労災請求を含むレセプト点検を専門スタッフが代行し、返戻率削減・請求漏れ防止をサポートします。
「労災レセプトでのミスや算定漏れに悩んでいる」というクリニック様は、ぜひご相談ください。