訪問診療の施設基準とは?届出要件とレセプト管理のポイントを解説

訪問診療を行うクリニックにおいて、安定した診療報酬の確保には、施設基準の届出と、それに基づく正確な加算算定・レセプト業務が欠かせません。
特に在宅時医学総合管理料(在総管)や特別管理加算、ターミナルケア加算などは、事前の届出が必要であり、算定ルールも複雑です。
しかし実際の現場では、
「届出はしたが実際の体制が合っているか不安」
「対象患者が毎月変わる中で、算定ミスや漏れが起きやすい」
「忙しくて病名や指導内容のチェックが後回しになる」
──そんな悩みを抱える医療機関も少なくありません。
そこで当社では、クリニックの訪問診療を支えるために、算定・加算・レセプト点検・病名登録の支援を行う遠隔レセプト支援サービス『メディサポ』を提供しています。
加算の算定漏れや返戻を未然に防ぎ、診療報酬の安定確保と業務負担の軽減をサポートいたします。
本記事では、訪問診療に関わる主な施設基準の内容と実務上の管理ポイント、そしてメディサポが提供する具体的な支援内容について詳しく解説します。

株式会社パドルシップ 代表取締役
京都大学卒、京都大学大学院修了
総合電機の技術職、日系コンサルティング会社で新事業企画、ベンチャー支援等の経験を経て、2023年に株式会社パドルシップを設立。
江戸川区のクリニック立上や戦略立案、集患を経験し、現在も経営に参画。

訪問診療における施設基準とは?
施設基準とは、医療機関が診療報酬を適切に算定・請求するために、厚生局へ届け出る必要のある医療提供体制の基準です。
訪問診療では、次のような理由で施設基準の重要性が高まります:
- 該当加算の算定が届出前では不可能
- 要件を満たしていないまま算定すると査定・返還リスクが発生
- 実績報告や更新忘れによる届出失効が起こりやすい
訪問診療に関わる主な施設基準とその届出内容
訪問診療にかかわる施設基準の一覧が以下です。
診療報酬点数名 | 必要な施設基準名 | 主な届出要件・基準内容 | 届出先 | 算定可能な加算や影響点 |
在宅時医学総合管理料(在総管) | 在宅療養支援診療所(在支診) | - 24時間連絡体制の確保- 医師2名以上の配置(または連携医療機関との契約)- 訪問看護・在宅医療の実施体制 | 地方厚生局 | 在総管、訪問看護指示料、緊急時訪問加算などが算定可能 |
強化型在支診 | 強化型在宅療養支援診療所 | - 年間200回以上の訪問診療実績- 年間10件以上の在宅看取り- 連携機関との協定・契約書 | 地方厚生局 | ターミナルケア加算の要件緩和、緊急時加算の算定容易化など |
特別管理加算 | 特別管理体制(個別に定義) | - 管理対象:CVポート、人工呼吸器、在宅酸素など- 定期訪問・記録の整備- 対象患者の明示と継続管理 | 地方厚生局 | 月1回、対象患者に加算(500点・250点など) |
在宅ターミナルケア加算 | 看取り体制の整備 | - 医師による死亡診断・家族支援・記録の整備- 看取り対応に関する事実確認書類- 実績に応じた算定 | 地方厚生局 | 在宅死亡に対して1回限りの加算(2,000点程度) |
在宅療養実績加算 | 実績基準の達成 | - 月1回以上訪問した患者:年間60人以上- 24時間対応の体制記録が必要- 訪問看護や急変対応の実績報告 | 地方厚生局 | 在総管や訪問診療料に上乗せ加算(30~100点) |
在宅患者緊急時等カンファレンス加算 | 多職種連携体制の整備 | - 医師・看護師・薬剤師・ケアマネ等による会議- 記録簿・日付・出席者記録の保管- 緊急時または医療必要度高い場合 | 地方厚生局 | 1回300点(1患者月2回まで) |
訪問看護指示書料 | 医師の訪問看護連携体制 | - 月1回以上、医師による看護指示書の発行- 指示書控えの保管義務(署名・日付) | 不要(レセプト内申告) | 月1回、訪問看護連携に対して70点算定 |
在宅患者訪問診療料(定期) | 届出不要 | - 月1~2回など定期訪問を行っている実態- 診療録記載が必要 | ―(届け出なし) | 回数に応じて1回につき算定(初診・再診区分あり) |
同一建物居住者に対する算定 | 施設情報管理(実態確認) | - サ高住・グループホーム等での居住者数確認- 同一建物患者のリスト化・管理 | 不要(ただし記録保管必須) | 2人目以降の訪問診療料が逓減される(訪問料1/2など) |
補足:届出に必要な主な書類(例)
- 「施設基準届出書(別添7様式など)」
- 24時間体制や連携機関との契約書写し
- 診療実績の記録(在宅件数、看取り数など)
- 連携先(訪問看護ステーション、病院など)のリスト
- 多職種カンファレンス実施の記録簿(議事録など)
その中でも、クリニックで良く届けられている施設基準についてさらに詳しく解説します。
① 在宅療養支援診療所(在支診)
▷ 目的
訪問診療の中心的な加算である「在宅時医学総合管理料(在総管)」を算定するための基礎となる届出。
▷ 主な要件
- 24時間連絡・対応体制の確保(自院または連携先)
- 医師2名以上の配置、または連携医療機関との契約
- 訪問看護・急変時対応の体制整備
- 必要書類:届出様式(別添7)、契約書写しなど
▷ メリット
- 在総管や訪問看護指示料、緊急時加算など多くの点数が算定可能になる
- 在宅医療機関としての信頼性が高まる
▷ 注意点
- 届出を出さずに在総管を算定すると査定・返還対象に
- 届出後も体制が維持されているか毎月チェックが必要
② 特別管理加算(在宅患者特別管理加算)
▷ 目的
CVポート・人工呼吸器・在宅酸素など、高度な医療機器・処置を継続的に管理している患者への評価。
▷ 主な要件
- 医師が定期的に訪問・指導・記録
- 対象となる患者(医療機器使用者など)の管理リストの作成
- 記録と訪問診療内容の整合性
▷ メリット
- 月1回、250~500点の加算が可能
- 高度医療対応の診療所として評価される
▷ 注意点
- 要件を満たさない患者に加算請求すると返戻対象に
- 対象患者のリスト管理・記録保管が必須
③ 在宅ターミナルケア加算
▷ 目的
在宅での看取りを行った際に評価される加算。
地域包括ケアを担う医療機関として、看取り実績を重視する施設に有利。
▷ 主な要件
- 医師による死亡診断書の交付
- 家族への支援、連携記録
- 記録様式の整備と保存
▷ メリット
- 1回の対応で約2,000点の加算が可能
- 強化型在支診の届出にも実績として活用される
▷ 注意点
- 看取り実績を記録・保存していないと査定対象
- 体制が不明確だと施設基準更新に支障
④ 在宅療養実績加算
▷ 目的
年間を通じた訪問診療実績がある診療所を評価する加算。
在支診・在総管に上乗せする形で請求できる。
▷ 主な要件
- 1年間に60人以上の患者に月1回以上訪問診療
- 実績を記録・報告できる体制
- 要届出(算定実績付き)
▷ メリット
- 月30~100点の加算が可能
- 継続的な在宅医療提供の証明となる
▷ 注意点
- 毎年の実績管理が必要
- 対象人数や記録が要件を下回ると算定不可
⑤ 強化型在宅療養支援診療所(強化型在支診)
▷ 目的
在宅医療の中核機関としての体制を強化している診療所の評価。
緊急対応や看取り件数が多いクリニック向け。
▷ 主な要件
- 年間200件以上の訪問診療実績
- 年間10件以上の在宅看取り実績
- 連携先医療機関との協定書
▷ メリット
- 緊急時訪問加算などの算定条件が緩和される
- 地域連携推進加算など、他点数にも好影響
▷ 注意点
- 実績に応じて更新が必要(年1回)
- 高いハードルのため定期的な実績集計が不可欠
実務で施設基準の管理体制を整える3つのポイント
① 届出内容と運用実態の一致を常に確認する
◆なぜ重要か
施設基準の届出は「体制が整っていること」を前提に点数の算定が認められる制度です。
しかし、届出当時は要件を満たしていても、実際の運用が変化しているケース(例:医師が1名減った、連携先が変わったなど)が多く、届出内容と実態に乖離があると査定・指導リスクにつながります。
◆実務でやるべき対応
- 届出内容一覧(Excel台帳など)を作成し、「体制要件」「連携先」「担当者名」などを記録
- 毎月・四半期単位でチェックし、要件維持の確認ルールを設ける
- 医師や連携先変更時は即時に届出見直しを行う体制を整備
◆注意点
- 加算算定に必要な届出が抜けたまま数ヶ月請求していると、過誤返還が必要になるケースあり
- 人の入れ替わりや契約更新時期に見直しを忘れないよう年次レビューを必須に
② 加算・施設基準別に「患者管理リスト」を運用する
◆なぜ重要か
施設基準と連動する加算(在総管、特別管理加算、ターミナル加算など)は、対象患者の条件を満たしているかどうかを明確に管理することが求められます。
算定できるか否かは毎月の患者状態によって変わるため、患者単位での確認リスト化が必要です。
◆実務でやるべき対応
- 「対象患者リスト(在総管対象者、特別管理加算対象者など)」を毎月更新・チェック
- 電子カルテと連携して、加算該当時にアラートを出す仕組みを構築
- 月初に「今月の加算対象者確認会議」を事務側で実施する体制づくり
◆注意点
- 点数算定要件(例:在総管対象=月2回以上の訪問が必要等)は一部でも要件漏れすると返戻対象
- 訪問予定と実績の突合がずれていると加算ミスの温床に
③ 届出・点検・更新業務を属人化させない
◆なぜ重要か
届出や施設基準管理は、ベテラン事務スタッフの「頭の中」にあるだけになりがちです。
しかし、その人が急な離職・休職になると、管理体制が崩壊し、結果的に算定不能・収益減少・返戻の連鎖が発生します。
◆実務でやるべき対応
- 施設基準・加算要件に関するマニュアルや運用フローを作成
- 管理表(GoogleスプレッドシートやExcelなど)はチーム全体で共有・更新
- 月1回の「レセプトミーティング」などで、点検・課題共有の場を持つ
◆注意点
- 属人的運用ではチェック漏れや届出遅れが発生しやすくなる
- チームで運用する仕組み化が、長期的に安定した請求体制につながる
まとめ
施設基準の安定運用には「現場の点検・可視化支援」が鍵
訪問診療における施設基準の届出・運用管理は、クリニック経営に直結する極めて重要な業務です。
しかし実際には、加算の要件や届出後の体制維持、対象患者の判定など、煩雑で専門性の高い運用が求められ、現場スタッフにとっては大きな負担となっています。
こうした課題に対し、レセプト業務支援サービス「メディサポ」では以下のような実務支援を通じて、施設基準に基づく加算算定・レセプト点検をサポートしています:
弊社レセプト代行サービス「メディサポ」の支援内容
- 加算算定の点検
→ 在総管・特別管理加算・ターミナルケア加算などの算定要件が満たされているかを点検 - レセプト提出前の加算・病名チェック
→ 算定ミス・返戻リスクのある項目を事前に洗い出し、未然に返戻・査定を回避 - 必要な傷病名・指導内容の登録支援
→ 加算に必要な病名や医師記載項目をフィードバック・ノウハウ化
これにより、施設基準に基づく加算が「算定できる状態なのに漏れている」「運用に不備があり査定される」といったリスクを回避し、
医療機関が安定的に診療報酬を確保できる体制を築くことが可能です。
こんなクリニック様におすすめです
- 訪問診療の加算や届出が正しく反映されているか不安
- レセプト返戻や査定が多く、対策に手が回っていない
- 医師や医療事務スタッフの業務負担を軽減したい
診療に集中できる環境を整えるために──
弊社では15年以上レセプト業務を行ってきた医療事務が在籍しています。
レセプト点検の外注を必要とされるクリニック様は、ぜひメディサポの活用をご検討ください。
施設基準に基づく安定した診療報酬請求を、現場目線で丁寧に支援いたします。

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