クリニックの売上分析に重要な診療単価とレセプト単価
開業医としてクリニックを運営していく立場になり、医師としてよい医療を提供することはもちろん重要ですが、クリニックの経営者として自院の経営をしっかり分析していくことも非常に大切です。
とはいえ、経営分析の経験がなければ、何をどのように分析すればよいか、わからないことも多いと思います。
そこで、そのような開業医の先生方にむけて、クリニックの事務長を経験した筆者が、効率的に経営分析を行うためにダッシュボードと呼ばれる経営の可視化ツールを開発しました。
実際に当該クリニックにも導入したことで種々データを用いて経営改善の議論がしやすくなったことや、分析するためのデータの前処理時間を削減できたことなど、様々な効果が得られました。ぜひ皆様のクリニックでも活用できたらという想いで記事を書いていきます。
株式会社パドルシップ 代表取締役
京都大学卒、京都大学大学院修了
総合電機の技術職、日系コンサルティング会社で新事業企画、ベンチャー支援等の経験を経て、2023年に株式会社パドルシップを設立。
江戸川区のクリニック立上や戦略立案、集患を経験し、現在も経営に参画。
本記事ではクリニック経営において基本的な指標である診療単価、レセプト単価についてご説明いたします。是非ご参考ください。
クリニックにおける売上とは
一般的に売上は、以下の計算式で表すことができます。
売上 = 顧客数 × 客単価
クリニックにおいての売上につきましては、顧客数は患者数になりますので、「クリニック売上= 患者数 × 単価」となりますが、もう少し詳細に記載すると、このような計算式になります。
クリニック売上 = 延べ患者数 × 単価 × 診療稼働日
延べ患者数とは、1名の患者さんが複数回来院した場合、それぞれ1件と考えるため、診療件数と言い換えることも可能であり、つまり「延べ患者数 = 患者数 × 来院頻度」となります。
この「延べ患者数」を先ほどのクリニック売上の計算式に用いると、このように表すことができます。
クリニック売上 = 患者数 × 単価 × 来院頻度 × 診療稼働日
それでは、この「単価」についてご説明したいと思います。
「診療単価」「レセプト単価」とは
クリニックにおける単価には2種類の見方があります。「診療単価」と「レセプト単価」です。それぞれ簡単に説明します。
診療単価:「患者さんが1回の診療にかかった費用」
レセプト単価:「1名の患者さんが1ヶ月でクリニックに支払った費用」
つまり、それぞれ以下の計算式で表されます。
診療単価 = 1ヶ月の売上 ÷ (診療稼働日数 × 延べ患者数)
レセプト単価 = 1ヶ月の売上 ÷ (診療稼働日数 × 患者数)
診療単価とレセプト単価の違い
診療単価とレセプト単価の違いは、患者さんの来院頻度を含んでいるかどうかです。
式で表すと、「レセプト単価 = 1ヶ月の再来院回数 × 診療単価」となります。
再来院回数が多い疾患を受け入れられているか、診療単価が高い検査などを適切に行っているかなどを分析することができます。
また、レセプト単価については、各地方厚生局が管内の都道府県別平均レセプト単価を公表していますので、それら平均と比較して自院は高いのか低いのかということも分析要素になります。
参考までに関東信越厚生局の令和6年度保険医療機関等の診療科別平均点数一覧票のリンクを掲載いたします。自院は平均よりも高いのか低いのかをまずは見てみても良いのではないでしょうか。
関東信越厚生局 令和6年度 保険医療機関等の診療科別平均点数一覧表
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/heikin.html
単価を上げるには
最後に、単価を算出できれば、どのようにして単価を引き上げられるかについて言及致します。
保険診療ではそれぞれの医療行為に対し診療報酬が定められていますので、大きく単価が変わることはありません。
ではどのようにして単価を上げられるのでしょうか。
診療単価
方針としては、必要な検査や処置を行っているか、算定や加算漏れはないかなどいわゆる漏れを防止する観点で単価を見る必要があります。
例えば非常勤の医師を採用している場合です。
基本的には院の方針に沿って診療を行ってもらうと思いますが、院長先生と考え方が異なる場合もあります。
検査や処置が適切に行われているか、院長先生の件数と比較してどうかなどを確認し、是正を促すことも有効です。
レセプト単価
基本的には診療単価と同様ですが、レセプト単価は都道府県別の平均単価がありますので、そちらと比較することができます。
同程度あるいは低い場合は先述の漏れがあるかどうかをまずは確認します。
次に再来院回数に着目します。
再来院回数は疾患に大きく依存するため、こちらも大きくは変わることはありません。ですので、再来院回数が下がらないようにすることが重要です。
外来のコミュニケーションに気を付ける、待ち時間や受付時間等の短縮、レセプト単価が高すぎる場合も注意が必要です。
レセプト単価の内訳に依存しますが、検査ばかり行われる、薬がたくさん出されるなど患者さんからのレピュテーションリスクに注意するようにしましょう。
もちろん高かったとしても適切な診療を行っていれば、それはクリニックの特徴です。クリニックの得意とする疾患や処置、検査など自院の強みを理解し、適切にアピールするようにしましょう。
まとめ
本記事ではクリニックの売上を構成する重要な要素である単価について説明しました。
診療単価は「患者さんが1回の診療にかかった費用」、レセプト単価は「1人の患者さんが1ヶ月でクリニックに支払った費用」のことであり、患者さんの再来院頻度がこれらの違いです。
レセプト単価=1ヶ月の再来院回数×診療単価ですので、ご参考ください。
単価を引き上げることは保険診療の場合、診療報酬が定められているため中々難しいですが、加算や算定漏れの確認、患者さんの再来院頻度を下げないようにすることは可能です。
是非一度自院の診療単価、レセプト単価を確認してみるようにしましょう。
クリニック経営分析ツール(ダッシュボード)のご紹介
最後に、筆者はクリニックの事務長業務を経験し、様々な経営指標を分析してきました。
データが散らばっていたり、意図したまとめ方がすぐにわからないなど様々な分析業務の非効率さを味わってきました。
そこで経営分析をしようにも、まず何からしたらいいかわからない方、データの前処理が面倒だと感じる方に対し、経営分析が簡易的にできるツール、メディカルボードを開発しました。
今後も使い方を開発しより良いツールにバージョンアップしていく予定ですが、少なくとも皆様の、電子カルテやレセコンのデータをエクセルにまとめたり、どのように可視化するのかを考える時間を削減したいと思い本ツールを開発しました。
是非一度使ってみてください!お問い合わせお待ち申し上げます。
クリニック事務長が作った経営分析ツール
「メディカルボード」
電子カルテデータより集患や運用の課題を抽出
クリニック事務長が作った経営分析ツール
「メディカルボード」
電子カルテデータより集患や運用の課題を抽出
- データ処理の煩雑さ/工数の増大
- 分析の切り口がわからない
現場でのこのような課題を解決するために、
電子カルテのデータを瞬時に見える化するツールを開発しました。