【患者数を増やしたい方へ】クリニックの集患を成功させるデータ活用術とは?

クリニックを経営する中で、「診療には手応えがあるのに、なかなか患者数が伸びない…」と感じたことはありませんか?

集患のために、チラシ、看板、Web広告、SNSなど、さまざまな対策に取り組んでいる方も多いかと思います。
しかし、こうした施策が思うように成果に結びつかない場合、その原因は「本当に解決すべき課題」を見誤っていることにあります。

例えば、「そもそも地域住民に知られていない」「予約ページの導線が悪い」「競合と差別化できていない」など、集患がうまくいかない理由はクリニックごとに異なります。
大切なのは、感覚に頼るのではなく、データを使って課題を可視化することです。

本記事では、クリニックの集患に悩む院長・事務長に向けて、「患者数を増やすために何から始めるべきか?」を、データ活用の視点からわかりやすく解説します。
現場経験をもとに開発された分析ツール「メディカルボード」の活用方法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

なぜ患者が増えないのか?集患対策に失敗する理由と対処の基本

集患のために、まず何をすべきか。

チラシを撒く、駅やバスの看板に載せる、インターネットでWeb広告をだす、など様々な手法がありますが、どれを優先すべきかの判断は難しいです。

集患のために実施すべき対策は何なのでしょうか。

なぜ集患に悩むクリニックが多いのか

集患のために実施すべき対策は何なのか?

これは、クリニックの状況・抱える問題によって異なるため一概には言えません。

例えば、人通りは多いが徒歩圏内の患者さんがまだ来ていない、という場合には、目につくような看板を設置すべきです。

一方で、高血圧など働き世代で「症状を放置してしまっている」ような患者さんにこちらからアプローチしたい、という場合には、働き世代が多く住んでおり、その人口に対して来院割合が低いエリアに、ピンポイントでチラシを投函するのがよいと思います。

もしくは、胸痛や骨折など「今診てもらいたいけど、どこが空いてるかな、、」という患者さんを増やしたい場合には、GoogleMAPの情報を充実させるのがよいかもしれません。

課題の見極めには「データ」が必須

集患をするとなった場合、どうしても「チラシが安いし良いかな」「バス広告も効果はありそう」など、対策の検討に終始してしまいがちです。これは、対策の方がその効果・価値が分かり易いため仕方がないとは思います。

一方で、上述のとおりクリニックによって抱えている問題が違うため、まずは現状を把握し、クリニックに潜む課題を抽出するべきです。課題が明確になった後に、それを解決するための対策を検討するべきと考えています。

集患対策の前にすべきこと:課題の仮説と整理

それでは、クリニックごとの課題はどう抱抽出すればよいでしょうか。

患者との接点から見る「見逃しポイント」

まずは課題がありそうな箇所を整理するのが良さそうです。これにより抜け漏れなく課題を洗い出せます。

整理の観点としては、患者さんとクリニックの接点を軸にまとめるのがよさそうです。以下に患者さんとクリニックの接点をまとめました。

図:患者さんとクリニックの接点

この図にて抜け漏れなくクリニックの課題を整理できそうです。

この図をもとに全体像を把握しつつ、「ここに課題がありそう」という仮説をたてるところからはじめましょう。

課題仮説の例:

  • クリニックの認知に課題がある:クリニックの前を通る人が多くないため、まずは近隣住民にクリニックの存在を知ってもらう必要がある
  • web予約に課題がある:サイトの予約ボタンがスマホで押しづらく、予約を諦めてしまうため、予約までの導線を整理する必要がある

このような仮説がない場合、検討があれこれ発散してしまい、いつまでたっても対策の検討が始まらない、ということになりかねません。

まずは課題の仮説を立て、その仮説が正しいかを確認していきましょう。

仮説を立て、対策の方向性を絞る

次に、考えられた課題に対して「本当にそうなっているか」をデータで確認します。

これは例えるなら「患者への処置の前に検査データを確認する」ような位置付けです。

このデータを確認するプロセスは手間がかかるため省略されがちですが、感覚に頼って無駄な施策を打ってしまわないためにも都度実施すべきと考えます。

では実際にどのようなことをすべきでしょうか。

具体的な実施例を以下に挙げます。

  • エリア分析:近隣住民が来院してなさそう。
  • 何を確認:クリニックから近い割に来院割合が低いエリアがないか確認する
  • web分析:クリニックのホームページはスマホでは見づらいかも
  • 予約せずにページを離れてしまう割合(離脱率)がPCに比べてスマホが著しく低いことはないかを確認する

データ確認の進め方をさらにイメージするために、エリア分析について具体的に説明したいと思います。

データで課題を裏付ける:クリニック分析の実例

それでは想定される課題として「近隣住民が来院してなさそう」が考えられた場合を例として、

  • 何を確認する?(確認すること)
  • 実際にどう分析する?(分析方法)
  • 実施したらどうなる?(期待する効果)

を整理していきたいと思います。

来院が少ないエリアを特定する方法

来院割合と距離の関係を可視化する

確認すること

近隣住民が来院していなさそうな場合、特に来院が少ないエリアがありそうですので、クリニックから近い割に来院割合が低いエリア がないか確認します。

分析方法

分析としては「マップ上に来院患者をピンで表示し、ピンが少ない箇所を確認」の方法が思い浮かびます。

この方法でもよいですが、これでは「住民が多いエリアなのか、少ないエリアなのか」がわかりません。

このため、エリアごとに人口に対する来院割合を算出し、これが距離が近い割に少ないエリアを抽出するのが良さそうです。

図:エリアごとの人口に占める来院割合

これにより、マップ上のピンでは把握がしづらい「住民が多いのに患者があまり来ていないエリア」を抽出することができます。

期待する効果

これにより、来院割合が低いエリアを抽出でき、「幹線道路があるからかな」「競合クリニックが近くにあるエリアだからかな」など、来院が少ない理由をさらに深掘りできます。

属性分析で「来ない理由」の仮説を検証

次に、そのエリアからの来院が少ない理由 を深掘りします。

確認すること

来院が少ない理由の深掘りとしては、理由の仮説を立て、それをデータで検証します。

具体的には、「このエリアの高齢者は、近くのベテラン先生のクリニックに通っていそう」などを、当該エリアの高齢者の来院割合で確認する、といったイメージです。

来院が少ない理由としては、年代・曜日・時間帯・疾患などの理由があるかもしれません。これをデータで確認します。

分析方法

分析の前に、まずはデータ作成から始めます。高齢者の来院割合を見たい場合には、データに 年代別 を加える必要があります。そのために、以下データを揃えます。

  • 町丁目別・年代別の人口
  • 町丁目別・年代別の患者数

町丁目別・年代別の人口は、各自治体のサイトに公開されていることが多いので、サイトにアクセスしてダウンロードする必要があります。
※2024年現在、全国の町丁目別・年代別のデータを一括で取得できるサイトはないため

参考として、東京都のデータは以下から取得可能です。

例:東京都の町丁目別・年代別の人口データ
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/kokusei/2020/kd-20index.htm
令和2年国勢調査 東京都区市町村町丁別報告 第一表

データが揃った後は、エリア別・年代別の人口に対する来院割合を算出します。この来院割合を用いて、該当エリアで高齢者の来院割合を確認します。具体的には、クリニックからの距離が同じ他のエリアの来院割合と、当該エリアの来院割合を比較します。

分析における注意点

ここで分析における注意点としては、データを触り出すと「これはどう?こっちはどう?」など、あれこれ確認をしたくなりますが、確認する観点はむやみに増やさないようにしましょう。観点が発散し、時間がいくらあっても足らなくなります。

まずは来院が少ない理由の仮説を立て(例:このエリアの高齢者は、近くのベテラン先生のクリニックに通っていそう、等)、その仮説を確認するに留めることが重要です。

期待する効果

この分析により、クリニックにおける課題を具体的に抽出することができることで、例えば「高齢者に向けた集患施策として、該当エリアの広報誌にチラシや広告を載せる」といった、ピンポイントの施策を検討することができます。

自院に合った集患戦略を立てるために:まず“課題の見える化”から始める

本記事ではクリニックの来院患者を増加するために、クリニックに潜む課題を抽出する方法についてご説明しました。

クリニックに潜む課題を抽出することで、結果が出やすい集患対策に絞って実施をすることができます。
是非一度自院でも無駄なコストをかけていないかチェックしてみてはいかがでしょうか。

クリニックの経営分析ツール:メディカルボードについて

最後に、筆者はクリニックの事務長業務を経験し、様々な経営指標を分析してきました。データが散らばっていたり、意図したまとめ方がすぐにわからないなど様々な分析業務の非効率さを味わってきました。
そこで経営分析をしようにも、まず何からしたらいいかわからない方、データの前処理が面倒だと感じる方に対し、経営分析が簡易的にできるツール、メディカルボードを開発しました。

今後も使い方を開発しより良いツールにバージョンアップしていく予定ですが、少なくとも皆様の、電子カルテやレセコンのデータをエクセルにまとめたり、どのように可視化するのかを考える時間を削減したいと思い本ツールを開発しました。
是非一度使ってみてください!お問い合わせお待ち申し上げます。