クリニックの開業までに必要なもの:電子カルテの4つの選定ポイント

この記事では、クリニックの開業に向けて準備をしているものの、
・「開業までに何が必要となるか?」
・「それはどう選択したらよいか?」
を知りたいと感じている先生にむけて、

1 クリニック開業までに必要なもの
2 選定におけるポイント
3 相談相手となるクリニック開業をコンサルする会社について

の3つについて解説します。

1.クリニック開業までに必要なもの

1-1.物件

まず、物件が必要です。物件選びはクリニックの運営に大きな影響を与えるため、重要な項目となります。患者が認知しやすく、診療も不自由なく実施でき、かつコストが抑えられる物件を選ぶことが必要となりますが、その詳細な内容については以下の記事で取り上げています。

クリニック開業における物件選びの4つのポイント

1-2.医療機器

診療に必要な医療機器の準備ももちろん必要です。
導入したい医療機器を全て導入すると想定金額(融資限度額など)をオーバーしてしまう場合には、各機器の導入優先度を比較します。
導入優先度の比較の仕方としては、以下3ステップで行います。

1 まず各機器がペイするために必要な患者数を算出
2 その患者数が来院することの難易度を算出
3 この難易度が低いものは導入優先度が高く、逆に難易度が高いものは導入優先度が低いとして、各機器を比較

機器の比較により、なかなかペイが難しい医療機器に関しては、初期導入ではなく他の方法で対応できないかを検討します。他の方法とは、機器の性能を絞る/リース契約にする/導入を諦める、などの方法です。
詳しい算出の方法については、別の記事で詳細に述べることにします。

1-3.事業計画

こちらはものではありませんが、開業1年目に何人の患者が来院していくら売上げ、必要なコストはいくらで、利益はどれぐらい出て、税金と融資の返済後にいくら手元に残り、またそれが数年後はどうなるか、という事業計画を立てる必要があります。
こちらは、物件による来院患者数の推計値や医療機器のコストを元に、コンサルタントや税理士に相談しながら作成します。

1-4.電子カルテ

こちらも最近ではクリニックを運営する上で必須のものです。
電子カルテとは、患者の基本情報の他、SOAPや検査結果、処方情報などをPCやタブレットで入力、閲覧することができるシステムです。2020年で約50%の診療所・クリニックに導入されています。
電子カルテは様々な種類がありますが、1度入れるとその交換のしづらさのために長い付き合いとなる場合が多いですので、導入時には入念な調査と慎重な判断が必要となります。
電子カルテの選択を間違えると、診療ができないとまではいかないですが、日々の診療のストレスの種となってしまうこともあります。

1-5.その他ITツール

電子カルテの他にも、PACSなどの診察に関係するシステム、また患者に関係するシステムとしては予約システムや会計システム、さらにクリニック運営側のシステムとしては勤怠システムや経理システムなどがありますので、必要に応じて導入します。
これらツールの導入により、業務効率化につながるだけでなく、診察の質が上がる・患者の離脱(来院を検討したがやめる)を防ぐ、などの効果が得られるものもあります。現状を把握し、ツールの導入の効果があるかを推定した上で導入を検討することが重要です。

1-6.クリニックのホームページ

ホームページを見てどのようなクリニックを確認してから予約をする患者様も少なくないため、ホームページは物件とは別のクリニックの顔と考えてよいです。
来院してほしい患者層に応じてホームページのデザインや機能も検討が必要です。例えば子供を持つ母親世代であれば、優しい雰囲気を持つデザインで、スマホでも見やすいホームページにすることが必要となってくる、といった具合です。

1-7.クリニックのスタッフ

「もの」ではありませんが、クリニック運営において必須であり、クリニック運営の問題として上がることが多いのがスタッフ関連です。
ものは「入れる」と決めれば入れられますが、スタッフはそうはいかず、いいスタッフに巡り合えるかはタイミングの問題になります。「物品等は全て揃ったが、スタッフが不足しているためにクリニックを運営できない」ということにならないよう、スタッフの採用には時間がかかる、ということを考慮した上で計画的にスタッフの採用を進めることが必要となります。

2.電子カルテ選定におけるポイント

必要なものを様々紹介してきましたが、本記事では電子カルテを例として紹介したいと思います。

2-1.電子カルテの特徴

電子カルテは無床病院・クリニック向けのものと、大病院向けのものとで機能が大きく異なります。大病院向けの電子カルテは、各部門の支援機能や連携機能等が備わっていますが、クリニック向けはそういった機能は不要なためシンプルな機能となっています。
電子カルテの構成は以下区分で分けられます
・クラウド型かオンプレミス型か
・レセコン一体型か分離型か
まずはこの区分を決めたのちに、細かい製品の比較をしていくべきです。

2-2.電子カルテの選定ポイント

まずは上記でも述べたとおり、クラウド型/オンプレミス型かを選定します。クラウド型はデータをベンダー側で管理、オンプレミス型はデータを全て院内で管理する方式になります。それぞれ一長一短がありますのでメリットデメリットを把握した上で選定する必要があります。端的にいうと、リスクを許容し効率を求めるのであればクラウド型、コストを許容し機能や安心を重視するのであればオンプレミス型となります。
次にレセコン一体型/分離型を選定します。レセプトとは診療情報明細書のことを言い、それを計算・作成してくれるコンピュータのことをレセプトコンピュータ(レセコン)と言います。この選択ですが深く考えることはあまりなく、「利用したいレセコンは特にない」場合には一体型でよいです。
ここまではある程度決められますが、ここから製品の比較に移ります。製品の比較軸は大きく以下4点で比較します。
◆費用
◆機能
◆サポート
◆使いやすさ

◆費用

電子カルテの費用を確認します。費用だけで決めることはお勧めしませんが、費用抜きで検討することはまずありません。
費用に関しては、機能やサポート・使いやすさに対して費用が安いか、というコストパフォーマンスの観点で確認します。
費用は初期費用/月額費用と、ハードウェア費用/ソフトウェア費用で分かれますので、それぞれの値段を確認しておくことが重要です。さらには、クリニックが回り出した際を見越して、ハードウェア/ソフトウェアが追加になる場合の費用もそれぞれ把握しておく必要があります。

◆機能

電子カルテの機能としては患者情報の管理の他にも様々な機能があります。例えば検査結果取込み機能、オンライン診療対応、PACSなどの院内機器連携機能、Web予約機能、キャッシュレス決済対応機能、などです。
一方で、これらを検討する前に、各業務で必要となる機能を詳細に決定しておくことが重要です。具体的には「Web予約システムには何の機能が必須となるか」などです。必要な機能は、対象となる患者層に応じて、またイメージする業務オペレーションに応じて変わってきますので、この機能があればいい、というものはないと考えてよいです。
ですので、上記必要な機能を決めた上で、その機能を電子カルテとして備えているかを確認し、備えていないのであれば、例えばWeb予約などは電子カルテメーカー以外のWeb予約システムを利用する、などを決めて行くことが必要となります。

◆サポート

電子カルテの使い方や、ハードウェアの故障などへの保守対応を比較します。手厚い方がよい場合には、このサポートが充実している製品を選択することも重要です。

◆使いやすさ

最終的には「機能・使いやすさが許容できるか」が判断ポイントですので、使いやすさを細かく確認します。毎日、患者ごとに操作するツールですので、クリックが1回多い、などもストレスの元です。「使っていけば慣れる」部分もありますが、本当に使いづらくてイライラする、という状況は避けたいところですので、ご自身で最後に確認するようにしましょう。

3.相談相手となるクリニック開業をコンサルする会社について

クリニック開業コンサルティングを依頼する必要があるか
ここまで必要なものや、その選定のポイントをあげてきました。開業までの時間が十分にあればこれらを全て先生1人でやるのも可能ですが、クリニック開業を決めた先生はその時点では別の場所で働いていることがほとんどですので、時間的余裕がない先生が多いと思います。また、新しいことを考える、決めることへの不安もあると思います。その際に相談する相手が、開業コンサルタントです。
開業コンサルティングとは、一般的に以下を指します。

・開業する先生の意思決定をサポートすること
・様々な情報を収集し共有すること
・収集した情報の分析やその結果から見える示唆を提供すること

先生の頭脳と手足、両面のサポートを推進することが、クリニック開業コンサルティングであると考えています。
先生には時間的余裕がなく、新しいことを考えたり、決めることへの不安があると申し上げました。その意味で、開業コンサルに相談するのも1つの手です。

3-2.開業コンサルを選ぶポイント

開業コンサルタントは先生のパートナーとも呼べる重要な存在です。だからこそ実績やサポート内容を踏まえて、慎重に選ばなければなりません。そこで最後に、コンサル会社を選定するポイントについて記載致します。

◆実績やノウハウがあるか

当然ですが、実績が豊富で、ノウハウが蓄積されているコンサル会社を選ぶのが良いでしょう。ただし、会社として実績やノウハウがあっても、担当者によっては期待していたパフォーマンスを発揮されない可能性がるため、実際に担当される方を紹介頂くなど、慎重に選ぶことをおすすめします。
ノウハウに関しては、特に重要なのは、上記検討のポイントで紹介した物件選定の考え方や事業計画の検討です。先生のやりたいことやクリニックコンセプトに則し、物件を探索するエリア選定や競合の見方、予想患者数の算出ロジックなど、「場所」に関するノウハウを保有するコンサル会社を選ぶべきでしょう。

◆先生の立場に立った支援か

クリニック開業において、不動産や医療機器、内装業者など関連する企業は多岐にわたります。そのため、先生は様々な営業や提案を受けることになります。
そこで、それらの企業の利害や提案の背景などを鑑みたうえで、フラットな目線で助言や情報提供してくれるコンサル会社を選ばれるのが良いでしょう。
言い換えれば、自社の立ち位置で意見するのではなく、本当の意味で先生の立場に立った意見をするコンサル会社を選ぶべきです。

◆開業後の経営サポートも見据えてくれるか

クリニック開業のコンサル会社には、開業前の支援にとどまるところが多く存在します。先生のクリニック経営の事業計画次第では、開業前の支援のみで十分な場合もあるでしょう。
ただ、いくら先生やコンサルタントが優秀でも、開業後に実際に計画通り進められるかは不確実です。しっかりとした計画は立てる一方で、計画とずれた場合に挽回策を実施することも必須です。
そのため、できれば開業後の経営支援も見据えてコンサル会社を選ばれる方が良いと思います。

◆信頼できる「仲間」かどうか

最後は、コンサルタント自身を信用できるか、ストレスなく付き合える人かどうか、という人と人の話です。
「信用のある会社で実績もあり、申し分ない提案をしてくれるのだけど、なぜか少し違和感がある」
「気軽には相談しにくい」
など、先生自身が感じるコミュニケーション上の違和感については、今後末永く付き合っていくパートナーとしては重要な論点です。無料の相談であれば時間的拘束以外に実害はないのかもしれませんが、有料の場合は特に重視されてはいかがでしょうか。

3-3.開業コンサルへの相談方法

最後に具体的にコンサル会社へ相談する方法について記載します。
知り合いから紹介を受ける場合は別として、初めて相談する場合、いくつかのコンサル会社に連絡しましょう。
手順としては、Webサイト等を閲覧し会社を選定し、気になった会社へ電話あるいはWebサイト等の問い合わせフォームを活用し連絡します。
その際、すぐに電話しても良いですが、自身の頭の中を整理する意味合いでも、以下を意識すると、より具体的な回答が得られると思います。

・開業の背景、およその開業時期
・開業エリアの想定、その理由
・開業メンバーの想定
・標榜科目、診療したい項目など
・コンサル会社への質問内容(何をどうやって支援してくれるのか、その費用など)

先生の置かれている状況や制限、想定について、先に伝えておいた方が、より具体的な支援方法を立案してくれます。
また、そういった投げかけをする中で、上記で述べた、信頼に足る人(・会社)か、コミュニケーション上の違和感がないかなど、HPを閲覧しているだけでは得られない情報を収集します。
そういった情報収集を踏まえ、今後の付き合いができそうなコンサル会社から活動の進め方、費用感などの提案を受けて、要不要も含めて決めるようにしましょう。

4.まとめ

クリニック開業をすると決めたら、何から始めればよいのかわからなく、時間的な余裕もない中で、不安なことも多いと思います。
まずは開業までの実施事項の全体像を先生ご自身でも把握し、どの部分のサポートが必要/不要かなど整理されるとともに、開業コンサルに一度話を聞いてみてはいかがでしょうか。

弊社では、有料コンサルを実施しております。
先生の想いの壁打ち相手から、開業エリア選定、物件選定はもちろん、事業計画の策定支援も行っております。
開業に際し、フラットに先生の意思決定をサポートさせて頂き、開業後の経営についてもサポートさせて頂きますので、是非一度お話を聞かせてください。
宜しくお願い致します。