クリニック開業における物件選びの4つのポイント

この記事では、クリニックの開業に向けて物件選びをしているものの、
「どういった物件にすべきか?」
「誰かに物件相談できないか?」
と感じている先生にむけて、

  1. 物件選びの重要性・実施ステップ
  2. 物件選びの各ステップにおけるポイント
  3. 相談相手となるクリニック開業をコンサルする会社について

の3つについて解説します。

1.物件選びの重要性・実施ステップ

1-1.物件選びの重要性

まず、クリニック開業の成功は、物件選びにかかっているといっても過言ではありません。それほど物件はクリニックの運営に大きな影響を与えます。
本当にそうか?と思われた先生もいると思います。「自身の手技には自信があるので、その手技のために患者の満足度が高く、そういった評判が評判を呼ぶのでは」と想像されているかもしれません。
もちろんこういった流れで患者数が増加することが全くないということはないですが、「患者数の増加速度は鈍い」です。
理由として考えられるのは、クリニックの評判は普段あまり人には言わないから、でしょうか。世間話の中で「あのクリニックよかったから今度行ってみたら」と友人に教える頻度は、「あのお店おいしかったので今度行ってみたら」と友人に教える頻度より少ないと考えられます。
開業の成功には物件選びがなぜ重要か、を以下の観点から説明したいと思います。

◆患者の認知の観点
◆業務オペレーションの観点
◆コストの観点

◆患者の認知の観点

開業したばかりのクリニックを人々がどう認知するかというと「実際に見かける」が大半を占めます。このため、「人がよく見かける物件」を選ぶことが開業の成功には重要になります。
Web上での認知も一定はありますが、開業したばかりの時期は検索でも上位に表示されておらず、口コミ等も少ないため、開業初期に限っては、Web上での認知よりリアル認知の方が重要になります。
では、「人が良く見かける物件」とはどういう物件でしょうか。
これは、「人通り多く視認性がよい物件」となります。物件を選ぶ際には、人通りと、クリニックの看板などの視認性を確認することが非常に重要となります。

◆業務オペレーションの観点

次に、いくら患者が行きたい、と思えるクリニックを作れても、その患者数を回せる物件でない場合もあります。
このため、あらかじめ来院される患者数を推計し、その数を回すために必要な物件の広さがどの程度であるかは、物件選びの前に検討をしておく必要があります。

◆コストの観点

上記とは逆に、今度は物件が広すぎる場合には賃料が利益を圧迫してしまいます。一般的にはクリニックの賃料が売上の6-8%程度を占めるケースが多いと言われているため、物件選びの前に、ざっくりと売上を試算し、許容できる賃料の上限を認識しておくのが重要です。

1-2.理想の物件を見つけるためのステップ

次に、物件の選定のステップをそれぞれ示します。

  • 診療圏分析

物件の選定ステップとしては、最初に診療圏分析を実施します。
診療圏分析とは、「その診療圏で患者がどの程度来院するか」を推計する分析のことで、物件を探す前に「そのエリアでちゃんと患者が来るのか」を確認するために行います。
具体的な方法としては、まずクリニックの開業候補エリアをいくつか選び、そのエリアごとに「人口」や「競合クリニック数」などの情報から「来院患者数」を推計します。エリアごとで算出した「来院患者数」を比較することで、どのエリアが相対的に有利かを理解し、「開業エリアの候補=物件を探すエリア」を絞り込みます。
この診療圏分析は、「各競合クリニックの影響度の違い」や「地形から考える患者の導線の影響」や「対象としている疾患ごとの年齢ごとの受療率」などを用いて、それぞれ補正をしつつ算出することが重要となります。詳しい算出の方法については、別の記事で詳細に述べることにします。

  • 物件条件の決定

次に、物件の探索時に必要な「物件条件」を決めます。

条件項目 調査方針 優先度案
エリア エリアによる患者数・患者層を調査
坪数 競合クリニックの診療実施内容とおよその広さを把握
賃料・

坪単価

エリアごとの情報をWebで調査 〇~◎
ビルタイプ コンセプトに合ったビルタイプを選定する
階数 2階、等
敷金・

礼金

10~12か月程度、等
周辺クリニック 周辺クリニックと連携できるか、も考慮 △~〇
設備関連
  • 必要な医療機器を想定する
  • 内装業者に確認する

クリニックの広さを求めるために、ここまで練り上げたクリニックのコンセプトのうち対象とする疾患に対応するために必要な医療機器を洗い出します。さらに、算出した「来院患者数」も参考に必要な部屋数を「診察室3つ、処置室1つ」のように見積もります。そしてそれぞれの部屋のサイズを必要な医療機器の大きさも加味しながらざっくりと算出し、クリニックとして必要な広さを求めます。
また、ターゲットとなる患者が来院する際にキーとなる物件の条件(例:建物の2F以上)があれば洗い出します。
さらに、診療圏分析の際に競合クリニックの位置まで把握していれば、それも参考に「駅の北側」など具体的なエリアも指定できるようにしておくとよいでしょう。

  • 物件の調査・内見・交渉

物件のエリア候補と条件が決まれば、実際に不動産会社に連絡をして、物件の調査をしてもらいます。該当する物件があった場合には内見へと続きますが、ここで内見時には「クリニックを運営するために必要な電気容量として十分か」や「水廻りで大幅な工事が発生しないか」などを確認してもらうために、内装業者に同行をしてもらうことが重要です。晴れてよい物件に巡り合えた際には、申込み・契約へと続きますが、この際に物件条件の交渉を実施し、納得した条件で契約をすることが重要です。

2.物件選びの各ステップにおけるポイント

2-1.クリニックの立地の考え方

物件の立地によっても来院患者数が変わってくるため、立地を考慮するのが非常に重要です。これは上記でも述べた通り「人通り多く視認性がよい物件」であるほど来院患者が見込める、といった具合です。人通りは、人の導線から推定するか、または実際に現地で調査することによって把握をします。視認性は、クリニックの看板をどこに掲げられるかを確認します。例として、非常に人通りが多い道路に面したビル3Fのクリニックでも、「看板はNGで、部屋の窓にクリニック名を掲げるのみOK」という場合には、通行人が上を見上げ、3Fのクリニックの表示に気付く割合はかなり低くなります。クリニックの立地としては、この人通りの多さ×視認性の良さを考慮し、どの物件が立地的に有利であるかを判断します。

2-2.エリアの競合クリニックとの比較

近くの競合クリニックと同じようなクリニックを開業しないように注意をする必要があります。このために、まずはエリア内の競合の調査を行い、自身のコンセプトに近いクリニックがあるかを確認します。そういったクリニックがあった場合には、①差別化をする②エリアを変えるなどの対策を検討することが必要となります。差別化の方法としては、クリニックの打ち出し方を変えるだけでも効果があります。打ち出し方を変えるとは、ターゲット患者を少しずらしてみる、診療項目や診療時間を少し変えてみるといったイメージです。

2-3.クリニックの特性に応じた物件条件

クリニックの特性に応じて、適切な物件条件が変わってきます。具体的には、高齢者の方に来てほしい内科であれば1Fが望ましいですが、クリニックに入ることを他人に見られたくないような性病検査のクリニックであれば、ビルの上階の方が望ましい、等です。

2-4.物件の交渉術

物件価格や契約条件の交渉も重要となります。賃料を交渉するのは難しい場合が多いですので、契約期間を延ばすことで更新料がかかる頻度を減らす、また開業までのフリーレントの期間として6か月を交渉する、などが良く行われる交渉でしょう。

3.相談相手となるクリニック開業をコンサルする会社について

3-1.クリニック開業コンサルティングを依頼する必要があるか

ここまで物件の選定のステップやポイントをあげてきました。開業までの時間が十分にあればこれらを全て先生1人でやるのも可能ですが、クリニック開業を決めた先生はその時点では別の場所で働いていることがほとんどですので、時間的余裕がない先生が多いと思います。また、新しいことを考える、決めることへの不安もあると思います。その際に相談する相手が、開業コンサルタントです。開業コンサルティングとは、一般的に以下を指します。

・開業する先生の意思決定をサポートすること
・様々な情報を収集し共有すること
・収集した情報の分析やその結果から見える示唆を提供すること

先生の頭脳と手足、両面のサポートを推進することが、クリニック開業コンサルティングであると考えています。先生には時間的余裕がなく、新しいことを考えたり、決めることへの不安があると申し上げました。その意味で、開業コンサルに相談するのも1つの手です。

3-2.開業コンサルを選ぶポイント

開業コンサルタントは先生のパートナーとも呼べる重要な存在です。だからこそ実績やサポート内容を踏まえて、慎重に選ばなければなりません。そこで最後に、コンサル会社を選定するポイントについて記載致します。

◆実績やノウハウがあるか

当然ですが、実績が豊富で、ノウハウが蓄積されているコンサル会社を選ぶのが良いでしょう。ただし、会社として実績やノウハウがあっても、担当者によっては期待していたパフォーマンスを発揮されない可能性がるため、実際に担当される方を紹介頂くなど、慎重に選ぶことをおすすめします。
ノウハウに関しては、特に重要なのは、上記検討のポイントで紹介した物件選定の考え方や事業計画の検討です。先生のやりたいことやクリニックコンセプトに則し、物件を探索するエリア選定や競合の見方、予想患者数の算出ロジックなど、「場所」に関するノウハウを保有するコンサル会社を選ぶべきでしょう。

◆先生の立場に立った支援か

クリニック開業において、不動産や医療機器、内装業者など関連する企業は多岐にわたります。そのため、先生は様々な営業や提案を受けることになります。そこで、それらの企業の利害や提案の背景などを鑑みたうえで、フラットな目線で助言や情報提供してくれるコンサル会社を選ばれるのが良いでしょう。言い換えれば、自社の立ち位置で意見するのではなく、本当の意味で先生の立場に立った意見をするコンサル会社を選ぶべきです。

◆開業後の経営サポートも見据えてくれるか

クリニック開業のコンサル会社には、開業前の支援にとどまるところが多く存在します。先生のクリニック経営の事業計画次第では、開業前の支援のみで十分な場合もあるでしょう。
ただ、いくら先生やコンサルタントが優秀でも、開業後に実際に計画通り進められるかは不確実です。しっかりとした計画は立てる一方で、計画とずれた場合に挽回策を実施することも必須です。そのため、できれば開業後の経営支援も見据えてコンサル会社を選ばれる方が良いと思います。

◆信頼できる「仲間」かどうか

最後は、コンサルタント自身を信用できるか、ストレスなく付き合える人かどうか、という人と人の話です。
「信用のある会社で実績もあり、申し分ない提案をしてくれるのだけど、なぜか少し違和感がある」
「気軽には相談しにくい」
など、先生自身が感じるコミュニケーション上の違和感については、今後末永く付き合っていくパートナーとしては重要な論点です。無料の相談であれば時間的拘束以外に実害はないのかもしれませんが、有料の場合は特に重視されてはいかがでしょうか。

3-3.開業コンサルへの相談方法

最後に具体的にコンサル会社へ相談する方法について記載します。知り合いから紹介を受ける場合は別として、初めて相談する場合、いくつかのコンサル会社に連絡しましょう。手順としては、Webサイト等を閲覧し会社を選定し、気になった会社へ電話あるいはWebサイト等の問い合わせフォームを活用し連絡します。その際、すぐに電話しても良いですが、自身の頭の中を整理する意味合いでも、以下を意識すると、より具体的な回答が得られると思います。

・開業の背景、およその開業時期
・開業エリアの想定、その理由
・開業メンバーの想定
・標榜科目、診療したい項目など
・コンサル会社への質問内容(何をどうやって支援してくれるのか、その費用など)

先生の置かれている状況や制限、想定について、先に伝えておいた方が、より具体的な支援方法を立案してくれます。また、そういった投げかけをする中で、上記で述べた、信頼に足る人(・会社)か、コミュニケーション上の違和感がないかなど、HPを閲覧しているだけでは得られない情報を収集します。そういった情報収集を踏まえ、今後の付き合いができそうなコンサル会社から活動の進め方、費用感などの提案を受けて、要不要も含めて決めるようにしましょう。

4.まとめ

クリニック開業をすると決めたら、何から始めればよいのかわからなく、時間的な余裕もない中で、不安なことも多いと思います。
まずは開業までの実施事項の全体像を先生ご自身でも把握し、どの部分のサポートが必要/不要かなど整理されるとともに、開業コンサルに一度話を聞いてみてはいかがでしょうか。

弊社では、有料コンサルを実施しております。
先生の想いの壁打ち相手から、開業エリア選定、物件選定はもちろん、事業計画の策定支援も行っております。
開業に際し、フラットに先生の意思決定をサポートさせて頂き、開業後の経営についてもサポートさせて頂きますので、是非一度お話を聞かせてください。

宜しくお願い致します。