クリニックの開業地の選び方を4ステップに分けて解説(診療圏調査)

クリニックの将来は、開業地の選定によって決まると言っても過言ではありません。
開業地によって来院される患者のボリュームや層が変わり、また近隣のクリニックとの差別化戦略が変わり、さらには一緒に働いてくれるスタッフも変わってきます。

「クリニックの開業地はここがいいと思っているが、成功しそうか?」
「開業地にこだわりはないため、どういったエリアがよいか?」

この記事では、クリニック開業を検討されている先生のこのような疑問を解決すべく、開業地の選び方について紹介と解説をしています。
具体的には、開業地の選び方は以下の手順で進めますので、それぞれについて細かく説明をしていきます。

  1.  開業エリアの候補を挙げる
  2. 開業候補のスクリーニング(省略可)
  3. 来院患者数の推計
  4. 開業エリアの優先度付け

手順1. 開業候補を挙げる

まずは先生の開業されたいエリアの候補を挙げます。駅近のクリニックを考えている場合はエリア=駅と考えて候補を挙げます。

候補は何個でもよいですが、重要なことはクリニック開業のコンセプトがある場合には、そのコンセプトを実現できるエリアを挙げるべきです。
例えば地元の高齢者が来やすいクリニックにする場合にはそういった方が来やすいエリアを候補としたり、逆に若い人が来やすいクリニックにする場合には若者が多い駅を候補とする、といった具合です。
また、今後長期にわたりそのエリアに通うことになりますので、通勤のしやすさを考慮することも非常に重要です。

一方で、「競合が多そう」という理由で少し気になっているエリアをこの段階で候補から外すのは避けるべきです。
そういった感覚が合っていることも多々ありますが、実際の来院患者数は後ほど調査しますのでそちらで検討してからでも遅くはないと考えます。

手順2. 開業候補のスクリーニング(省略可)

手順1で候補が多い場合は一次スクリーニングを実施します。
スクリーニングの方法としては、以下のようなグラフにエリアをプロットし、各エリアがどういった特徴があるのかを確認します。

手順2-1. エリアの人口の調査

グラフにプロットするために、まず縦軸のエリア人口を調査します。ここで人口は例えば「駅を中心として1.5km圏内の人口」などを調査します。
エリア人口ですが、各エリアの居住人口が自治体のサイトなどで公開されていますので、それを元に取得します。
また、エリア外から人が多くやってくるエリアの場合は、駅の乗降者数などから流入人口を推計します。

手順2-2. エリアの競合クリニックの調査

横軸として、エリア内の競合となるクリニックの数を調査します。クリニック数ですが、ここでも上記と同様に「駅を中心として1.5km圏内のクリニック数」などを調査します。
こちらは様々な調査方法がありますが、例えばGoogleMapでクリニックを検索し、それぞれのクリニックが競合であるかを判断することで、競合のクリニック数をカウントする方法が考えられます。

ただし、上記作業はエリアが多い場合は非常に骨が折れることは容易に想像がつくと思います。
このため、クリニック数を算出してくれるツールを利用することも考えられます。

クリニック数を算出してくれるツールは様々なものがありますが、注意点としては先生がやられようとしているクリニックの競合でないクリニックも含んでしまっている可能性がある、ということです。
より精緻な比較をする場合には、先生のクリニックのコンセプトを理解されたコンサルタントなどに、競合数をカウントしてもらうことも検討すべきかと思います。

いずれにせよここではまだ一次スクリーニングですので精緻な情報でなくとも問題ありません。

手順2-3. 開業候補の比較

上記で取得をした人口と競合クリニックを元に各エリアをプロットします。

プロットの結果、左上にプロットされるエリアがあれば優先をします。次にエリア人口が多く競合も多い、またはエリア人口は少ないが競合も少ないエリアを抽出します。

ここで3-4個のエリア候補に絞り、以降の詳細比較に移ります。

手順3. 来院患者数の推計

開業エリアの候補が3-4個に絞れたら、実際のクリニックへの来院患者数を推計します。

来院患者数の推計方法ですが、以下のような考え方で、式としては、人口×受療率×来院係数÷(競合数+1) により算出をします。

まず人口ですが、年代ごと、開業地からの距離ごとの人口を算出します。年齢ごとにすることで、次に登場する年齢別の受療率を掛け合わせることができます。

次に年齢別受療率を取得します。こちらは厚生労働省の「患者調査結果」などから、クリニックが対象とする疾患の受療率を算出します。

さらにここは細かいですが来院可能係数というもので、来院患者数に補正をかけます。これは「患者の移動手段」、「駅からの近さ」、「クリニックへの導線」、「開業するクリニックの影響度」を踏まえた、クリニックへの患者様の気安さを考慮するための係数になります。

最後に競合数ですが、こちらは競合となるクリニック数をそのまま利用してもよいですが、重みづけをした後の競合数を用いるのをお勧めします。
重みづけとはどういうことかというと、クリニック1件を1件としてではなく、影響度が低いと思われるクリニックは0.4件とカウントし、逆に影響度が高いと思われるクリニックは1.4件としてカウントする、のようにそれぞれのクリニックに重みづけをした上でカウントをします。
クリニックの影響度の具体例としては、「母親世代はクリニックを探す際にGoogleMapなどで近くのクリニックを検索したりしますが、クリニックのHPがないようなクリニックには行きづらいため、そういったクリニックは影響度が低いと判断する」などです。
こういった「クリニックの影響度」を様々な観点で評価し、各競合の重みづけをした上で、競合数をカウントします。
クリニックの影響度の評価の方法は、例えば以下のような観点で評価をします。

競合の規模や、安心感・清潔感を与えているか、また目につきやすいクリニックか、またWeb上で評価が高いか、などの項目ごとに、若年・中年層に影響するか、高齢者層に影響するか、を考えた上で評価をしていきます。

最後に、各指標が算出できたら、計算式により来院患者数を推計します。

手順4. 開業エリアの優先度付け

最後に上記で推計した来院患者数に加えて、定性情報を追加し、開業エリアの優先度を決めます。
定性情報としては下記のように「影響度の高い競合が多い」や「通勤がしやすい」などになります。

優先度の判断は難しいですが、致命的な内容がないかをまずは確認します。例えばピンポイントで全く同じようなコンセプトのクリニックがある場合は、そこは避けた方がよい、などです。
また、ここでは1番よいエリアに絞ることに拘らずに、除外するエリアを決める、ことを目的とした方がよいと考えます。理由として、最終的には開業する物件を1つに絞りますが、優先度が1番のエリアによい物件が出ない可能性もあるためです。エリアを決めた際には物件探索をすると思いますが、探索するにも2エリアぐらいの候補を挙げて物件を探す方がよいと考えます。

まとめ

開業地の選び方について細かく説明をしましたが、いかがでしたでしょうか。やり方はわかったとしても、実際に人口を集計したり、競合クリニックを調査したりするのは一筋縄ではいかないと思います。

弊社ではクリニックのことを深く理解したデータに強い専門家が在籍しており、上記のような手法を駆使した診療圏分析をはじめ、有料のコンサルティングを実施しております。

先生の想いの壁打ち相手から、開業エリア選定、物件選定はもちろん、事業計画の策定支援、その後の開業準備のご支援、開業後のご支援も行っております。
開業に際し、フラットに先生の意思決定をサポートさせて頂き、開業後の経営についてもサポートさせて頂きますので、是非一度お話を聞かせてください。
宜しくお願い致します。