クリニック開業における医療モールのメリット/デメリット

本記事では、開業を検討されている先生や、現在分院展開を検討されている先生に対し、
医療モール開業のメリット/デメリットについてご説明します。

クリニック開業までの流れ

一般的な開業までの実施事項をまとめると、以下のプロセスになります。

①開業するクリニックのコンセプトを整理する
②診療圏分析・競合調査(需要と競合数の把握)
③開業エリアの選定・物件探索・選定
④事業計画の作成
⑤融資先の選定
⑥内装会社の選定・工事の実施
⑦必要医療機器の選定・購入
⑧スタッフ採用
⑨HP制作・Web/リアル広告
⑩保健所等の行政手続き
⑪開業準備(動線確認、スタッフ教育、オペレーション確認等)、内覧会等

詳しくはこちらの記事をご確認ください
クリニック開業におけるコンセプトとは?項目やポイントを解説

この記事では、③開業エリアの選定・物件探索・選定における、医療モール開業のメリット/デメリットについて解説いたします。

1.医療モールとは

 医療モールというコンセプトに明確な定義はありません。
ですので、世の中の医療モールの説明例をご紹介したいと思います。

<厚生労働省 薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会 薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ>
「同一ビル内に複数の保険医療機関がある(医療モール)」

※出典:薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 令和4年2月14日 資料2 「薬局薬剤師に関する基礎資料(概要)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000896856.pdf

<アイセイ薬局の例>

「様々な診療科のクリニックと調剤薬局が同じ建物や隣同士の建物などに物理的に集まり、かつ便利な共用スペースなども設け、患者さまへ利便性を提供するとともに服薬情報の一元管理を実現するもの」
※出典:「アイセイ薬局マンスリーレポート2019年6月号」https://www.aisei.co.jp/news/9907502476

したがって、「医療モール」とは、「物理的に近接している複数の診療所と調剤薬局、医療サービス提供事業者の集まり」と言えると思います。

同一ビル内のものもあれば、マンションの低層部、商業施設に併設されたもの、戸建て型や診診連携を主軸に地域として医療モールとみなす場合もあり、細かく言うと、様々な形態が見られます。

ですが、これらは開業される先生から見ると、あくまでも開業形態の一つであり、先生の実現したいコンセプトに対し開業したいエリアに物件があるかどうかを探索する際の一つの手段です。ですので、メリット/デメリットを踏まえて、これらの形態で開業するかを吟味して選択する必要があります。

また、医療モールの組成・開発には、不動産会社やコンサルティング会社など様々な業種の企業が実施しておりますが、本記事では調剤薬局さんが組成・運営する医療モールについて解説します。

それは調剤薬局が開業医の先生と共に出店するケースも多く、その場所での出店リスクもある程度一蓮托生である点、また調剤薬局からすると開業後の処方箋量が主な収益源になるため、開業後のクリニックの患者人数に関心があると考えられます。
したがって、先生側から見て、医療モールを運営する調剤薬局は、開業前後で親身になって支えてくれる存在であることは間違いありません。

後述致しますが、開業まである程度期間があり、医療モール自体への抵抗がなければ、薬局の組成・運営する医療モールでの開業も検討すべきであると我々は考えています。

別業種の医療モールについては、またの機会にご説明いたします。

2.医療モールでクリニック開業するメリット/デメリット

それでは、医療モール開業のメリット/デメリットをご説明します。

<メリット>

【開業準備時点】
1.5年~2年程度前から開業物件を探索する場合、医療モールでの開業も検討した方が良いと我々は考えています。それは、以下の理由からです。
・人気エリアの建替えや新築案件は計画される段階から参画しなければ、埋まるケースが多い
・通常の賃貸物件では数か月後で引渡し可能という物件数は少なく、開業準備期間を考えると、空家賃が発生する期間が少なからず存在する場合がある
・新築の医療モールでは内装期間中に賃料が発生しない場合もある

したがって、開業準備における最大のメリットは、物件探索において良い物件が見つかるタイミングに律速されることなく、開業準備を計画的に行える点だと考えられます。

【開業後】
開業後のメリットとしては以下が挙げられます。
・隣地に別の科目のクリニックがあることで、患者さんに対して認知されやすい
・近隣に薬局があることで利便性が高まる。また、薬局が近いことがクリニックの魅力のひとつとみなされる。
・薬局としても処方箋量を増やしたい思惑はあるので、クリニックの患者数を増やすことは目的が合致する。そのため集患イベント等を共同で行ってくれる可能性がある

<デメリット>

【開業準備時点】
以下のデメリットが考えられますが、いずれも事前の確認を行えば避けられる範疇であると考えられます。
・人気エリアでは考えにくいですが、想定通りに医療モール組成がうまくいかず、他者都合で開業時期が伸びるリスクがある
・内装工事会社や医薬品会社が特定業者の指定を受ける場合がある
・駐車場台数を確保できない場合がある

【開業後】
隣地のクリニック間連携が不足することは一般的な課題として言われることが多いです。
そのため、デメリットとして以下が考えられます。
・診療所同士の人間関係のストレス
・診療内容のオーバーラップ(インフルエンザワクチン等)に対して患者さんの獲得競争が生じる場合もある

3.まとめ

以上、主に調剤薬局が組成・運営する医療モールのメリット/デメリットについてご説明いたしました。

様々な業態で医療モールを組成・運営している企業がありますが、
弊社としては出店に対してある程度同様のリスクをもつ調剤薬局の運営する医療モールが良いと考えております。
一口に調剤薬局と言っても多くの会社が医療モール事業を行っており、それぞれの企業で持つ物件が異なります。そのため、横断的に物件情報を得ようとすると、それなりに手間や時間がかかります。

また医療モールの提案を受ける際、運営主体の調剤薬局が分析を行い、間違いない立地のものを提案されると考えられますが、
いずれにしても、先生自身が物件としての魅力を測り、その場所で開業の成功をイメージできるかで選択する必要があります。

医療モールで開業することがもちろん目的ではありません。
開業時期が少し先になっても良いなど期間に余裕がある場合、開業の物件探しの一手段として位置づければ、有用な手段であると弊社では考えております。

セカンドオピニオンの位置づけとして弊社でも物件の魅力評価(診療圏分析)を実施しています。

また弊社では、先生の想いの壁打ち相手から、開業エリア選定、物件選定はもちろん、事業計画の策定支援、その後の開業準備のご支援、開業後のご支援も行っております。
開業に際し、フラットに先生の意思決定をサポートさせて頂き、開業後の経営についてもサポートさせて頂きますので、是非一度お話を聞かせてください。
宜しくお願い致します