開業医としてクリニックを運営していく立場になり、医師としてよい医療を提供することはもちろん重要ですが、経営者として自院の経営を見ることも非常に大切です。
特に開業前から開業初期にかけては、地域に自院を認知してもらい、患者さんに来てもらう人数を増やしていくこと(集患)が最重要課題だと思います。
集患に限らず、開業医の先生は、診療以外に労務や人事、経理、広告など業務の範囲が非常に多岐にわたります。
とりわけ昨今はWeb上にHP(ホームページ)を制作しクリニックを紹介しながら患者さんの認知獲得が求められます。ただ、Webの集患は専門性も高く、自身で進める先生は少ないのではないでしょうか。
そこで弊社では、診療と経営を両立させるため、また先生の想いを発信できるようにすることを目的としたクリニック専門のWebマーケティングサービス(BUZZ Medical)を立ち上げました。
多くの先生はWeb集患は専門業者に丸投げだと思いますし、先生自身がWeb集患の専門性を高める必要はないと思いますが、その枠組みを少しでも理解しながら業者に依頼した方がより高い効果が得られると考えています。
また昨今、美容等の自由診療の領域はもちろん、保険診療においても都市部のクリニックを中心に、web集患は基本施策に位置付けられています。ホームページをつくることは新規開業クリニックではほぼ行われていますが、web集患の対策までは必ずしも必須ではないという位置付けで、まだ実施していないクリニックもあると思います。
地域の競合クリニックが行なっている場合、ただホームページを作るだけでは立ち行かなくなる時代が来る可能性が保険診療の領域でも起こりえます。
過度に対策する必要はありませんが基本的な考え方を理解し、地域の方々への認知をwebという手段で広げていくことは必須だと筆者は考えています。
その基本的な考え方を理解する意味でも、この”お役立ち情報”では専門用語の解説やWeb専門業者が何のために何を行っているのかをわかりやすくご説明したいと思っています。
本記事では、SEOと呼ばれるWebでキーワードを検索した際に表示される順位について、その対策の具体的な手順や対策キーワードの選定視点について解説したいと思います。クリニックならではの観点でキーワードを選定する視点をご紹介したいと思います。

株式会社パドルシップ 代表取締役
京都大学卒、京都大学大学院修了
総合電機の技術職、日系コンサルティング会社で新事業企画、ベンチャー支援等の経験を経て、2023年に株式会社パドルシップを設立。江戸川区のクリニック立上や戦略立案、集患を経験し、現在も経営に参画。

検索順位とは
まず、検索順位やSEOという考え方について簡単にご説明します。
検索順位とは、インターネット上で検索する際、特定のキーワードの検索結果において各Webサイトが表示される並び順のことです。GoogleやYahoo等の検索エンジンが各キーワードに対し、最も適切な答えが記載されたWebページだと判断した順に並びます。
一般的に、上位に表示されるほど多くの人の目に留まります。また、検索する人が使用するデバイス、年齢層等のユーザーデータ、検索の日付など、多岐にわたる要素を総合して順位が決定されています。
ちなみに、検索順位とクリック率(=「ユーザーがクリックした回数」÷「検索した際に表示された回数」)の関係は、2024年のデータ※では、1位:39.8%、2位:18.7%、3位:10.2%、4位:7.2%、5位:5.1%、6位:4.4%、7位:3.0%、8位:2.1%、9位:1.9%、10位:1.6%となっています。検索画面の1ページあたり10位まで表示され、5位以下だと5%を切る、つまり100人検索して5人しか自身のWebサイトに訪れないということです。
この順位が各検索キーワードごとに決まっており、各Webサイトは自身のWebサイトに訪れるようにするために、狙いたいキーワードごとに人の目に留まるよう、この検索順位を競っているということです。
※引用元:Firstpagesage
https://firstpagesage.com/reports/google-click-through-rates-ctrs-by-ranking-position/
SEOとは
次にSEOという言葉があります。SEOとはSearch Engine Optimizationの頭文字ですが、日本語にすると検索エンジン最適化ということです。
簡単に言い換えると、Gooogle等の検索エンジンにおいて自身のサイトの検索順位を上位に表示させるように対策することをSEO、あるいはSEO対策と言います。
上記でご説明したように、各Webサイトは各キーワードごとに自身のWebサイトが上位に表示されるように競っています。特に都市部のクリニックや美容等の自由診療の領域では、このSEO対策を行っているところが多数あり、集患対策の基本となっています。自身のクリニックのHP(ホームページ)を作っただけでは、検索順位が他院の方が上位に表示され、せっかく良いHPを作っても訪れる患者さんは少数になってしまいます。
適切にSEO対策を実行し、少なくとも自分のクリニックの特徴を示すキーワードは上位が取れるようにしておくことは特に開業初期の段階では最重要だと筆者は考えています。
集患のためのSEO対策である記事執筆の具体的な手順
こちらでの記事でもご紹介しましたが、”SEO対策をする”とは、集めたい患者さんが検索するキーワードを推測し、そのキーワードに対して答えを用意することです。
具体的には、検索順位を高めたいキーワードに対し、記事や説明文を執筆することです。
基本的な考え方を確認したい方はこちら
【クリニックのWeb集患対策】
検索順位を引き上げる(SEO)キーワード戦略の考え方、進め方について解説
こちらの記事でご紹介した通り、検索順位を高めたいキーワードの選択視点は以下です。
①多くの患者さんが検索するキーワードを選ぶこと = 検索ボリューム
②先生が書きやすいキーワードであること = 専門性、権威性
③クリニックとして集めたい患者さん層であること = 開業の想い、収益性
また、「動悸」と「胸痛」など、患者層が少し重なってしまうようなキーワードを立て続けに対策するのではなく、最初は、「動悸」「喘息」など患者層が比較的重ならないように飛び石で対策していくことが効果的です。
では次に、10~20記事程度記事が溜まってきてからはどのように考えるのでしょうか。以下でご説明いたします。
関連キーワードの抽出方法
まず、関連キーワードとは、検索するユーザー(患者さん)が検索するメインのキーワード(目的)に関連するキーワードのことで、検索意図を予測することに活用できます。
また、サジェストキーワードという、メインのキーワードに対して付随して検索窓に入力するキーワード(「糖尿病 何科」などの2語目以降のキーワード)も関連キーワードの一部です。
このサジェストキーワードは、ラッコキーワード※などの無料ツールで調べることができます。
例えば、「糖尿病」というメインキーワードのサジェストとしては、「糖尿病 原因」「糖尿病 食事」「糖尿病 薬」「糖尿病 何科」・・・などです。
このようなツールを活用すると、関連するキーワードを無料である程度網羅的に調査することができます。
※ラッコ株式会社 ラッコキーワード
https://rakkokeyword.com/
検索ボリュームは足きりに使う
次に抽出したサジェストキーワードの検索ボリューム(月間検索数)を取得します。
こちらはGoogle社のキーワードプランナーというツールが良いと思います。Google社の広告を行っていると、無料で使うことができ、あるキーワードの検索ボリュームを測定してくれます。
ーワードプランナーの詳しい使い方は別記事でご紹介したいと思います。
検索ボリュームを取得すれば、以下のような結果が得られます。
<キーワード>
糖尿病 ・・・●●件/月間
糖尿病 食事 ・・・●●件/月間
糖尿病 薬 ・・・●●件/月間
・・・
ここで申し上げたいのは、検索ボリュームはあくまでも足きりに使う、ということです。
検索ボリュームが数百件もないレベルですと、そのキーワードを対策してもあまり集患効果は期待できません。一方で、ボリュームが多い方がもちろん良いのですが、多い場合、得てして競合も多く、検索順位として上がりにくくなる傾向にあります。
つまり、検索ボリュームは足きりに用い(例えば数百件に満たないキーワードは捨てる)、足きりを超えるキーワードに対して対策することが重要になります。
対策キーワード選定は問診のOPQRSTに沿って選定する
次に、関連キーワードすべてをいっぺんに対策することはできませんので、優先的に対策するキーワードを選定します。その選定の視点として有用なフレームワークとして、筆者は問診のOPQRSTが活用できると思っています。
先生方にとっては問診のPQRSTという言葉はなじみがあるかと思います。
OPQRSTは以下の頭文字のことで、患者さんの症状を問診する際に医師が意識している聞き方です。
Onset:発症機転 「いつから?」 例:今朝から、急に、ずっと など
Palliative&Provoke:寛解・増悪 「どうすると良く/悪くなるのか?」例:横になると、朝起きると、回すと など
Quality&Quantity:性状・強さ 「どんな/どれくらい?」 例:引っ張られるように、詰まった など
Region:部位 「どこが痛くなる?」 例:首の後ろ、首筋 など
Symptoms:随伴症状 「他にどんな症状がある?」 例:頭痛、めまい など
Time course:時系列 「最初はどうで、次にどうなって、今は?」例:動悸が止まらない など
クリニックのSEO対策において、キーワードを選定する際に、このフレームワークは有用で、患者さんが検索する意図や来院する意図を予測することに活用できます。
例えば、整形外科領域で「肘内障」を対策したい場合、どのようなキーワードを対策すればよいでしょうか。
まずは、ターゲットとする検索者はどのようなキーワードを入力するか想像します。
一般的に、いつ、誰、どこ、症状などで検索することが多いため、以下のように考えます。
<肘内障のケース>
Who:誰の症状か? ・・・「子供」など
When:クリニックに行くタイミングはいつか?・・・「夜間」「早朝」「土曜」など
Where:クリニックのどこに行くか?・・・「何科」「整形外科」「近くの」など
What:症状は?・・・(OPQRSTも参考にしながら選定する)「腕 動かない」「肩 痛い」など
いつ、誰、どこはある程度どの疾患を対策する場合でも共通するところが多いかと思いますが、症状については、疾患によって様々です。その際に活用できるのが、先ほどのOPQRSTの考え方です。
肘内障の場合、腕や肩の症状を訴える場合が多く、その部位を対策した方が良いと考えます。また、他の疾患として、動悸の場合は、めまいなどの随伴症状を対策しても良いと思います。
関連キーワードのリストからそれらの重要なキーワードを選定し、記事にその言葉を入れるようにし、執筆するようにしましょう。
まとめ
本記事では、関連キーワードの抽出についてご説明しました。
その具体的な手順は以下の通りです。ぜひご参考ください。
① 対策したいキーワード(Big KW)定める
② ラッコキーワード等※でBig KWのサジェストをCSVで抽出する
③ そのCSVをキーワードプランナーに貼り付け、検索ボリューム(月間平均検索数)を見る
④ ボリュームと来院意図のありそうな関連KWを選定する
(Who, When, Where, What(症状)に対し、OPQRSTのフレームを活用)
※ボリューム数百以上くらいでフィルタする
⑤ 記事作成する
※ラッコ株式会社 ラッコキーワード
https://rakkokeyword.com/
昨今、美容等の自由診療の領域はもちろん、保険診療においても都市部のクリニックを中心に、web集患は基本施策に位置付けられています。ホームページをつくることは新規開業クリニックではほぼ行われていますが、web集患の対策までは必ずしも必須ではないという位置付けで、まだ実施していないクリニックもあると思います。
地域の競合クリニックが行なっている場合、ただホームページを作るだけでは立ち行かなくなる時代が来る可能性が保険診療の領域でも起こりえます。過度に対策する必要はありませんが基本的な考え方を理解し、地域の方々への認知をwebという手段で広げていくことは必須だと筆者は考えています。
弊社では、先生方のクリニックのWebにおける集患を支援するBuzz Medicalというサービスを立ち上げました。
HP制作やリニューアル、SEO対策、MEO対策、Google広告代行など、様々なWeb集患のお手伝いをしております。
ぜひ一度、お問い合わせください!